ものの歩 感想

なんか久しぶりに読みたくなり、Kindleでまとめ買いしました。

「ものの歩」。

かつてジャンプで連載していた将棋漫画です。

残念ながら全五冊で打ち切りとなりましたが、とても面白い作品です。

『ものの歩』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト – Shonen Jump

あらすじ

要領が悪過ぎてなにをやっても結果を出せない主人公、高良 信歩。

そんな信歩が、手違いからプロ棋士を目指す人が集うシェアハウス「かやね荘」に入り、将棋と出会う。

将棋の魅力に取り憑かれた信歩は、自分もまたプロを目指すと決める。

ざっくりですが、あらすじとしてはこんな感じです。

完全素人の信歩が仲間や親友、ライバルと出会い成長していく姿が描かれます。

主人公、高良 信歩

信歩は一度問題にぶち当たると、それだけに囚われて手が止まってしまうタイプです。

テストでとにかく簡単な問題をたくさん解いておいて点を稼ぐとかができないタイプですね。

中学は学校と家の往復のみ(なので服は制服と部屋着しか持っていない)。

学校も当然休み時間も潰して勉強、とかなり灰色の青春を送っています。

しかもそれで第一志望の高校に落ちています。

物語開始当初の信歩はどん底で、なに一ついいところがないです。

しかし、そんな信歩の一つのことしか考えられない短所は、将棋という場において長所として作用します。

徹底的に総当たりで可能性を潰していく信歩の思考パターンは、こと将棋の終盤戦において驚異的な読みの鋭さとして機能するのですね。

この終盤戦の強さが物語全体できっちり信歩の武器として描かれているのがとてもいいです。

「序盤に追い詰められてまずい、まずいぞ……! でもここをなんとか抜けられたら……!」

そんな読書の思いにきっちり答えてくれます。

基本的に不器用で要領が悪く、他人に引かれるレベルで真っ直ぐな人間なので、合わない人は合わない主人公かもしれません。

打ち切りになった時、やっぱりこの主人公じゃ人気出づらかったのかな、と思ったのは内緒です。

かやね荘

信歩の拠点となり、共に将棋のプロを目指す仲間が集うかやね荘。

かやね荘の面子は信歩を除いて五人います。

みんなのリーダー、ゆるふわ系お兄さん、直井 泰金。

ミステリアス(天然)な大人の男、県 銀雅。

チャラさが魅力のムードメーカー、弥代 桂司。

男か女か最後までわからない潔癖症、桜井 香月。

そしてかやね荘の紅一点にしてヒロイン、風丘 みなと。

彼らは将棋のプロを目指す先達として信歩を導き、彼らもまた、ひたむきに努力する信歩君の姿に感化されて成長していきます。

人間ってやっぱり、他人のものでも努力が叶う瞬間って嬉しいですからね。

「もう将棋しかないんだよ!!!」

「勝つか死ぬかなんだよ」

そんな台詞で信歩にプロへの厳しさを突きつける彼らにとって、ひたむきに努力し、かつ結果を見せてくれる信歩の姿はひとつの救いだったのではないでしょうか。

努力の先には必ず結果が待っている。(※ただし必要な努力の量に個人差あり)

ただし書きがちょっと残念ですが、恐らくこれがものの歩のテーマなのだと思います。

ヒロイン、風丘 みなと

わざわざ枠設けるほどか、と思いましたが、好きなキャラなので書いておきます。

家の中では口が悪く、下着姿で歩き回るズボラっぷり。

家の外では愛想全開。メイクも外面もばっちりこなす。

「言い訳を残したくないから、家の外では全部完璧にこなす」

そんなポリシーを持つみなとですが、作中において驚異のヒロイン力を発揮してくれます。

主人公の大会はちゃんと応援に行く。

変装で主人公のジャージを着てる。

主人公の試験結果に興味ないふりしながら一番心配してる。

主人公の顔についた米粒を取ってくれる。

などなど。

ラブコメだったら毎回主人公のドキドキが描写される場面をかなりの数こなしてくれます。

ものの歩はラブコメではないので、コマの隅っこでさりげなくヒロインポイントを稼いでいく感じですが、そこが自然な感じでかえってよかったです。

あくまで将棋漫画なのでアクセントのひとつですが、やっぱり作者の方も意識していた部分なんでしょうね。

打ち切りになりつつも、きっちり信歩君とみなとの関係はひとつの区切りを見せてくれます。よかったよかった。

対戦相手たち

将棋なので、当然対戦相手が必要です。

物語はいくつかの大きな区切りで別れています。

それぞれの物語の中で、成長した信歩君に蹴散らされる役だったり、逆に壁として立ちはだかる対戦相手たち。

彼らもまた、ひとりひとりにしっかりとしたキャラづけがされており、物語を盛り上げてくれます。

深く鋭い読みを得意とする信歩の対局、広く柔らかい読みの力を持つ、相楽 十歩。

名前に同じ歩を持つことからも察せられる通り、信歩にとって終生のライバルとなったであろうキャラです。

信歩と同じようにかつてプロを目指し、諦めた過去を持つ仙國 元春。

プロの世界への挑戦する前の、最後の壁としての忍の前に立ちはだかります。

他、数ページの描写で倒されてしまうような対戦相手も、あとから出てきた時に「あの時のやつか」とわかる程度にしっかり印象づけされています。

倒したらそこまでのバトル物と違って、倒したあとも対戦相手が味を出してくれるのも、スポーツ(?)物の魅力でしょう。

信歩君が基本的に愛されキャラなので、信歩君が試験に受かった結果を知って、今まで戦ってきた対戦相手それぞれが嬉しそうにしている描写があるのはとてもいいな、と思いました。

まとめ

人物描写がしっかりしており、将棋が知らない人でも安心して読める将棋漫画だと思います。

打ち切りという結果のため、最後の話の主役が主人公じゃないなどの勿体ない面はありますが、読んでる間はそういう点も気にならなかったです。

実際私は将棋はルールくらいしか知りませんが、こうして感想を書こうと思うほど楽しめました。

機会があれば是非他の人にも読んでもらいたい漫画です。

以上、長文になりましたが、読んでいただいてありがとうございました!